『小さな声で囁いて』公開に向けて

この作品は大切な人との二人の時間について撮りました。
その時間は一人でいる時も二人でいる時間に繋がっています。
ささやかな時間を見るような映画です。
それは、その二人だけが持っている共通言語みたいなもので、他者とは共有しずらいことです。
誰かにとってはとても幸せなことだったり、誰かにとってはどうでも良いことだったり。
その人にとって何が大切かなんて側から見ると分からない。
分からないからこそ、それを否定する権利は本人たちの中にしかない。
分からないことや、共有できないことこそ他者でもあり本人でもある僕達が大切に守っていかなければならないと思います。
悲しいとか嬉しいとかそんな感情だけではなく、もっと僕たちの身の回りにあるもの。
そのような一見退屈ともとられかねない時間に目を向けなければなりません。
それはなんだってよくて、日頃の生活に転がっています。
何百何千回と繰り返してきた取り留めのない行為や、全然興味はないけれど永遠と聞かされる他愛もない話でも、それがあなたと私が一緒にいる理由になるのなら。
それはとても脆く、今にも次の時間に飲み込まれてしまいそうなもの。
またそれは気を抜くとすぐに忘れてしまって、後悔と哀愁によって僕たちは苦しめられる。
そうやって僕達の目の前を気づかぬまま通り過ぎていく慣れ親しんだひとときを一瞬でもいいから掴み取りたくて、この映画を撮りました。
この映画に描かれている時間は僕が信じて守り続けてきたものです。
これ以上、一秒も切ることができませんでした。
僕達の映画と観てくれる方々がお互いに歩み寄った時、それは初めてかけがえのない時間となるのだと思います。
山本英